医学部(令和5年度入学年度のポリシーについて)

理念・目的

深い人間愛と広い視野を持ち、医の倫理を身に付け、科学的根拠に基づいた医学的知識、技術を備え、地域医療や国際医療に貢献できる医療人や国際的に活躍できる優れた研究者を養成する教育・研究を行います。

キャッチフレーズ

国民の健康を支える医療人育成

教育目標

病める人の苦痛を自らの苦痛と感じることができ、生涯にわたって医学的知識、技術の修得に努め、地域社会・国際社会の保健医療・福祉に貢献する人材及び疾患の原因解明や治療法の開発に寄与できる研究者の養成を目指します。

医学部の学位授与方針(ディプロマポリシー)

▼医学科

医学科では、医学部の「深い人間愛と広い視野を持ち、医の倫理を身に付け、科学的根拠に基づいた医学的知識、技術を備え、地域医療や国際医療に貢献できる医療人や国際的に活躍できる優れた研究者を養成する教育・研究を行います。」という理念・目的を実現するためのカリキュラム(教育課程)を策定しています。このカリキュラムにより学修し、全学的に定められた教養と汎用能力に加えて、以下の専門知識・スキルを身につけた学生に学位を授与します。

医学科卒業生が備えるべき専門知識・スキル

1. プロフェッショナリズム

  • 医の倫理と生命倫理:医療と医学研究における倫理の重要性を概説できる。
  • 患者の権利:患者の基本的権利を熟知し、これらに関する現状の問題点を説明できる。
  • 医師の義務と裁量権:患者のために全力を尽くす医師に求められる医師の義務と裁量権に関する基本的態度、習慣、考え方と知識を説明できる。
  • インフォームドコンセント:適切な説明を行った上で、患者の選択に基づき、主体的な同意を得るための、対話能力と必要な態度を身につけ、患者本位の考え方ができる。

2. コミュニケーション

  • コミュニケーションスキル:医療の現場におけるコミュニケーションの重要性を理解し、信頼関係の確立に役立つ行動ができる。
  • 患者と医師の関係:患者と医師良好な関係を築くために、患者の個別的背景を理解し、問題点を把握することができる。

3. チーム医療の実践

  • 患者中心のチーム医療:チーム医療の重要性を理解し、医療従事者との連携を図る行動ができる。

4. 医学知識と問題対応能力

  • 生命現象の科学
    • 生命現象の物質的基礎:主要な生体分子の特性、構造と機能を説明することができる。
    • 生命の最小単位-細胞:人体の各組織を構成する細胞について、形態と機能を説明することができる。
    • 生物の進化と多様性:生物の進化と多様性を知り、系統発生学の見地から動物の身体の構造と機能を説明することができる。
    • 生態と行動:地球上における生物個体間の関係と相互作用を説明することができる。
  • 個体の構成と機能
    • 細胞の構成と機能:主要な細胞小器官および細胞内の微細構造について、形態と機能を説明することができる。
    • 組織・各臓器の構成、機能と位置関係:人体を構成する基本骨格を三次元的に説明することができる。
    • 組織・各臓器の構成、機能と位置関係:人体を構成する器官系やシステムの構造と機能を関連付けて説明することができる。
    • 組織・各臓器の構成、機能と位置関係:多臓器からなる系の役割と機能を説明することができる。
    • 組織・各臓器の構成、機能と位置関係:臓器を構成する4つの基本組織の知識をもとに各臓器の特徴を説明することができる。
    • 組織・各臓器の構成、機能と位置関係:人体の器官に観察される微細組織構造について、形態と機能を説明することができる。
    • 個体の調節機構とホメオスタシス:生体の恒常性を維持するための情報伝達と生体防御の機序を説明することができる。
    • 個体の調節機構とホメオスタシス:各種生理機能検査法の原理と計測結果について説明することができる。
    • 個体の発生:個体と器官が形成される発生過程を概説できる。
    • 生体物質の代謝:生体内の主な代謝経路の働きと調節機構を説明することができる。
    • 遺伝と遺伝子:遺伝子から蛋白質への流れに基づいて生命現象を学び、遺伝子工学の手法と応用やヒトゲノムの解析を説明することができる。
    • 神経科学:ヒトの神経系の構造と機能に関して概要を説明することができる。
    • 神経科学:主要な神経回路、伝導路の構造と機能に関して説明することができる。
    • 神経科学:中枢神経系とそれを取り巻く構造を三次元的に説明することができる。
  • 個体の反応
    • 生体と微生物:病原微生物(細菌、ウイルス、真菌)の構造と特性を説明することができる。
    • 生体と微生物:病源微生物の病原性獲得・発現機序を説明することができる。
    • 生体と微生物:病源微生物の感染・伝播機序およびその予防対策を説明することができる。
    • 生体と寄生虫:寄生虫の種類を分類し個々の種の特徴について説明することができる。
    • 生体と寄生虫:日本国内で頻度が高く認められる寄生虫症について説明することができる。
    • 生体と寄生虫:国外で頻度が高く認められる寄生虫症について説明することができる。
    • 免疫と生体防御:免疫系を構成する細胞について機能を説明することができる。
    • 免疫と生体防御:免疫応答の成り立ちを説明することができる。
    • 免疫と生体防御:免疫応答の異常によって起る疾患について説明することができる。
    • 生体と放射線・電磁波・超音波:医学・医療の分野に広く応用されている放射線や放射線以外の電磁波等の生体への作用や応用について説明することができる。
    • 生体と薬物:薬物が作用する受容体等の標的分子及びその薬理作用を説明することができる。
    • 生体と薬物:薬物の有効性、有害作用、さらに他薬物との相互作用を説明することができる。
    • 生体と薬物:各種疾患に対する有効な治療薬、作用機序及び禁忌を説明することができる。
  • 病因と病態
    • 遺伝子異常と疾患・発生発達異常:遺伝子・染色体異常と発生発達異常や疾患の発生との関連を概説できる。
    • 細胞傷害・変性と細胞死:細胞傷害・変性と細胞死の原因と細胞・組織の形態的変化を説明することができる。
    • 細胞傷害・変性と細胞死:病理標本の観察に基づいて、組織・細胞の構造異常や機能異常による種々疾患の成り立ちや臨床意義についての説明ができる。
    • 代謝異常:糖質、蛋白質、脂質等の代謝異常によって生じる多様な疾患について説明することができる。
    • 循環異常:循環障害の病因と病態を説明することができる。
    • 炎症と創傷治癒:炎症の概念と感染症との関係、またそれらの治癒過程を概説できる。
  • 人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療
    • 人体各器官の構造と機能を理解し、それぞれの器官の主な疾患の病因、病態生理、症候、診断と治療を説明できる。
    • 精神系:精神と行動の障害に対して、全人的な立場から、病態生理、診断、治療を理解し、良好な患者と医師の信頼関係に基づいた全人的医療を説明できる。
  • 全身におよぶ生理的変化、病態、診断、治療
    • 感染症:主な感染症の病因、病態生理、症候、診断と治療を説明できる。
    • 腫瘍:腫瘍の病理・病態、発生病因・疫学・予防、症候、診断・治療と診療の基本的事項を説明できる。
    • 免疫・アレルギー疾患:免疫・アレルギー疾患の病態生理を理解し、症候、診断と治療を説明できる。
    • 物理・化学的因子による疾患:中毒と環境要因によって生じる疾患の病態生理を理解し、症候、診断と治療を説明できる。
    • 成長と発達:胎児・新生児・乳幼児・小児期から思春期にかけての生理的成長・発達とその異常の特徴および精神・社会的な問題を説明できる。
    • 加齢と老化:急速な高齢化に対応して、老化に伴う生理的変化、高齢者に特有な疾患の概念、リハビリテーションと介護に関わる問題を説明できる。
    • 人の死:個体の死について説明できる。

5. 診療技術と患者ケア

  • 診療の基本
    • 症候・病態からのアプローチ:主な症候・病態の原因、分類、診断と治療の概要を発達、成長、加齢ならびに性別と関連づけて説明できる。
  • 基本的診療知識
    • 薬物治療の基本原理:診療に必要な薬物治療の基本(薬理作用、副作用)を説明できる。
    • 臨床検査:検査の方法、適応と異常所見を説明し、結果を解釈できる。
    • 外科的治療と周術期管理:外科的治療と周術期管理の基本を説明できる。
    • 麻酔:全身麻酔・局所麻酔の基本を説明できる。
    • 食事と輸液療法:食事と輸液療法の基本を説明できる。
    • 医用機器と人工臓器:医用機器と人工臓器の基本を概説できる。
    • 放射線等を用いる診断と治療:放射線等による診断と治療の基本を説明できる。
    • 内視鏡を用いる診断と治療:内視鏡の原理とそれによる診断と治療の基本を概説できる。
    • 超音波を用いる診断と治療:超音波機器の原理とそれによる診断と治療の基本を説明できる。
    • 輸血と移植:輸血と移植の基本を説明できる。
    • リハビリテーション:リハビリテーションの基本を説明できる。
    • 介護と在宅医療:介護と在宅医療の基本を説明できる。
    • 緩和医療・慢性疼痛:緩和医療および慢性疼痛の基本を概説できる。
  • 臨床実習
    • 診療の基本:患者情報の収集、記録、診断、治療計画について習得し実施できる。
    • 診察法:患者との信頼関係に基づいた医療面接と診察ができる。
    • 基本的臨床手技:基本的臨床手技の目的、適応、禁忌、合併症と実施法を習得し実施できる。
    • 各診療科における主要疾患の症候、病態、診断、治療を習得し実施できる。また予後を説明できる。
    • 診療チームの一員として救急医療に参加できる。

6. 医療の質と安全の管理

  • 安全性の確保:医療上の事故等(インシデント(ヒヤリハット)、医療過誤等を含む)や医療関連感染症(院内感染を含む)等は日常的に起こる可能性があることを認識し、過去の事例に学び、事故を防止して患者の安全性確保を最優先することにより、信頼される医療を提供しなければならないことを理解できる。
  • 医療上の事故等への対処と予防:医療上の事故等(インシデント(ヒヤリハット)、医療過誤等を含む)が発生した場合の対処の仕方を説明し実践できる。
  • 医療従事者の健康と安全:医療従事者が遭遇する危険性(事故、感染等)等について、基本的な予防・対処および改善の方法を説明できる。

7. 社会における医療の実践

  • 社会・環境と健康:社会と健康・疾病との関係について理解し、個体および集団をとりまく環境諸要因の変化による個人の健康と社会生活への影響について概説できる。
  • 地域医療:地域医療の在り方と現状および課題を理解し、地域医療に貢献するための能力を習得できる。
  • 疫学と予防医学:保健統計の意義と現状、疫学とその応用、疾病の予防について説明できる。
  • 生活習慣と疾病:生活習慣(食生活を含む)に関連した疾病の種類、病態と予防治療について説明できる。
  • 保健、医療、福祉と介護の制度:保健、医療、福祉と介護の制度の内容を説明できる。
  • 診療情報:医療情報の利用方法、情報管理とプライバシー保護について説明できる。
  • 臨床研究と医療:医療の発展における臨床研究の重要性について説明できる。
  • 地域医療臨床実習:地域社会(へき地・離島を含む)で求められる保健・医療・福祉・介護等の活動を通して、各々の実態や連携の必要性を説明できる。
  • 死と法:異状死体の検案について説明できる。
  • 臨床上遭遇する可能性のあるトラブルを未然に防ぎ、あるいはそれに善処するための法医学的知識を説明できる。
  • 異状死体の届け出等、医師として必要な法的義務を理解できる。
  • 死亡診断書(死体検案書)を作成できる。
  • 法医血液学、遺伝学について基礎を理解できる。

8. 科学的思考

  • 医学研究への志向の涵養:生命科学や医療技術の成果を生涯を通じて学び、病因や病態を解明する等の医学研究への志向を涵養できる。
  • 医療の評価・検証:医療の改善のために不断の評価・検証と倫理的および患者の利益と安全に配慮した科学的研究が必要であることを説明できる。
  • 社会医学と公衆衛生が疾病の予防と寿命の延長に貢献していることを具体的に説明できる。
  • 主要な疾病について遺伝的要因と環境的要因が関与していることを説明できる。
  • 疫学研究について、研究デザイン、実施方法、解析方法、解釈、研究倫理について説明できる。

9. 生涯にわたってともに学ぶ姿勢

  • 課題探求・解決能力:自分の力で課題を発見し、自己学習によってそれを解決するための行動ができる。
  • 学習の在り方:医学・医療に関連する情報を重要性と必要性にしたがって客観的・批判的に統合整理する基本的能力(知識、技能、態度・行動)を用いて学習できる。
  • 生涯学習への準備:医学・医療・科学技術の進歩と社会の変化(経済的側面を含む)やワーク・ライフ・バランスに留意して、医師としてのキャリアを継続させる能力(知識、技能、態度・行動)を有し、生涯にわたり学習することができる。

10. 国際的な視野

  • 英語でのコミュニケーション(情報収集と発信)ができる。
  • 英語での診療ができる。
  • 国際交流(留学、留学生との交流)ができる。
  • 世界標準の診療を理解し実践できる。

▼看護学科

看護学科では、グローバルな視点をもって看護学分野の継続的発展を支え、地域社会に貢献できる、質の高い看護職者の育成を目指しています。看護学科では、人間の生命の尊厳を基本とし、看護の倫理性を身につけ、深い人間愛と広い視野を持つ看護専門職の育成を目的とし、全学的に定められた教養と汎用能力に加えて、以下の専門知識・スキルを身につけた学生に学位を授与します。

看護学科卒業生が備えるべき専門知識・スキル

豊かな人間性

  • 倫理的な諸問題に対処し、対象者の尊厳と権利を擁護できる。
    • 人の尊厳及び人権の意味を理解し、その擁護に向けた行動ができる。
    • 実施する看護について説明し同意を得ることができる。
    • 個々人の価値観を理解し、意思決定を支援できる。
    • 看護の対象となる人々と援助的関係を形成できる。

問題解決力能力

  • 対象者を全人的に理解し、健康問題を科学的に判断し、創造的に解決できる。
    • 人間や健康を総合的に捉え説明できる。
    • 根拠に基づいた看護を提供するための情報を探索し活用できる。
    • 看護実践において、理論的知識や先行研究の成果を探索し活用できる。
    • 批判的吟味や分析的手法・問題解決法を活用して、看護計画を立案し展開できる。
    • 実施した看護実践を評価し、記録できる。

看護実践力

  • 対象の特徴をふまえ、科学的な根拠に基づいた看護を実践できる。
    • 看護の対象を査定(Assessment)できる。
    • 看護援助技術を理解し、適切に実施できる。
    • 健康の保持増進と疾病予防の必要性を理解し、適切に指導・教育ができる。
    • 急激な健康破綻状態および回復過程にある人々を援助できる。
    • 慢性疾患及び慢性的な健康課題を有する人々を援助できる。
    • 終末期にある人々を援助できる。
    • 安全なケア環境を提供できる。

連携する力

  • 看護の担うべき役割を認識し、看護専門職および他職種と協力し連携できる。
    • 保健医療福祉における看護の機能と看護活動の在り方について理解できる。
    • 地域における健康危機管理及びその対策に関わる看護職の役割について理解できる。
    • チーム医療における看護及び他職種の役割を理解し、対象者を中心とした協働の在り方について説明できる。
    • 保健医療福祉サービスの継続性を保障するためにチーム間の連携について説明できる。

地域ケアに貢献する力

  • 国内外における社会情勢の変化を敏感に捉え、看護を国際的な視野からみつめ、保健・医療・福祉に貢献できる。
    • 疾病構造の変遷、疾病対策・医療対策の動向と看護の役割について説明できる。
    • 社会の変革の方向を理解し、看護を発展させていくことの重要性について説明できる。
    • グローバリゼーション・国際化の動向を踏まえた新しい看護を実践できるよう努力できる。

自己研鑽力

  • 将来に向けて、主体的・継続的に学習できる。
    • 自らの日々の看護を振り返り、自己の課題を解決できるよう努力できる。
    • 看護専門職の専門性を発展させていくことの重要性について説明できる。
    • 専門職として、健康・時間を管理し、生涯にわたり学習し続けることができるよう、自己を省察・評価する習慣を身につけることができる。

医学部の教育課程編成・実施方針(カリキュラムポリシー)

▼医学科

 医学科では、医学部の「深い人間愛と広い視野を持ち、医の倫理を身に付け、科学的根拠に基づいた医学的知識、技術を備え、地域医療や国際医療に貢献できる医療人や国際的に活躍できる優れた研究者を養成する教育・研究を行います。」という理念・目的を実現するためのカリキュラム(教育課程)を策定しています。このカリキュラムは、全学的に定められた教養と汎用能力のコンピテンシー(能力・資質)、文部科学省などで作成された医学教育モデル・コア・カリキュラムに準拠して独自に定められています。また、本カリキュラムは医学科の学位授与方針(ディプロマポリシー)に基づき、専門知識・スキルのすべてを確実に身につけ、それらを統合的に発揮する力、すなわち「自ら学び、自ら考える力」を獲得するように編成されています。 また、医学科では教育プログラムを国際的基準に合致したものとする取り組みを行ってきました。2018年度に日本医学教育評価機構(JACME)による医学教育分野別評価を受審し、世界医学教育連盟(WFME)の国際基準に適合しているとして2026年9月までの認証を取得しています。今後も本学独自のより良いカリキュラムとなるよう継続的に改良に努めてまいります。
 学生の学修成果は、シラバスに明記された評価方法及び評価基準に基づいて、到達目標への到達度により評価します。総括的評価と形成的評価を行い、臨床実習開始前の資格判定はアウトカムベースで行います。また、卒業判定はディプロマポリシーによる総合評価とします。

 以下に2021年度入学生から適用している医学科のカリキュラムについて説明します。

一般教育および基礎医学

 1年次から、まず全学共通教育科目の履修を通じて幅広い知識、自らの専門以外の学問分野、語学などを学びます。データサイエンス教育、生命科学、実験医学も重視しています。1年次前期の「教養総合講義」で医学部で何を学べるかを知り、臨床系の教員も参加する臓器別の「ヒトの体と病気」では医学入門ともいえる基礎知識を学びます。また、1年次後期の「社会の中の医療・医学」では学内外の幅広い分野の方と意見交流する機会を設けています。3年次には「倫理学・プロフェッショナリズム」の講義があります。これらにより、医療人に求められるプロフェッショナリズムを身につけるとともに、医学を学ぶモチベーションを高めていきます。

 さらに、1年次には山梨県内の病院で実施されるECE(Early Clinical Exposure、早期臨床体験実習)があります。2年次には医学部附属病院で行われる「防災トリアージ訓練」に看護学科生とともに参加します。 3年次には、各消防署のご協力のもと「救急用自動車同乗実習」を行っています。これらによって、早い段階から実際の臨床を体験するとともに、コミュニケーション、チーム医療の重要性などについても学びます。このようなコンピテンシーは、一朝一夕に身につくものではないことから、6年間を通して繰り返し学修し、ブラッシュアップしていきます。

 1年次の後期から専門科目として基礎医学科目が始まり、医学の基盤となる生化学、解剖学、生理学、神経科学等を系統的に学びます。生化学では生体の構成成分であるタンパク質・核酸・脂質・糖などの生命分子の性状と働きおよび代謝について学習します。解剖学では人体の正常構造を顕微鏡および肉眼レベルで観察し、その構成と機能連携を学習します。生理学では人体の正常な機能を細胞、組織、器官の各レベルで理解し、それらが統合されて個体として機能する仕組みを学習します。神経科学では解剖学、生理学、生化学、薬理学の分野を横断した統合講義を通して、ヒトの脳神経系の成り立ちと機能について学びます。 また、2年次には生命現象を分子レベルで理解するための生命科学実習があります。

臨床基礎医学

 2年次後期からは、感染免疫学、微生物学、免疫学、薬理学、病理学、臨床薬理学、感染制御学等を系統的に学習します。これら基礎医学系科目は臨床医学とより密接に関連しており、臨床基礎医学科目として両者をスムーズに結びつける橋渡しの役割を果たします。例えば、疾患の治療や診断には薬剤の使用は不可欠ですが、薬理学では各種疾患に用いる薬剤の作用、副作用、作用メカニズム、さらに新薬開発について学びます。感染症はいつの時代も大きな医学的な問題ですが、感染免疫学や微生物学では各種ウィルス、細菌等の性質や制御方法を、また免疫学ではこれらウィルスや細菌に対する身体の防御機構である免疫機構について、またその暴走により起こるアレルギー等について系統的に学習します。

社会医学

 4年次の前期には、法医学、社会環境医学、行動科学で社会医学を学びます。法医学は「死者の声なき声を聞く」重要な医学領域であり、犯罪や裁判に必要な医学的事項を学びます。社会環境医学は従来の衛生学、公衆衛生学であり、健康政策、地域医療、地域保健、予防医学、産業医学、環境医学、疫学など多岐にわたります。生涯を通じた健康支援、「社会を診断して人を治す」ための知識と技術を涵養します。行動科学は予防行動や治療行動の実践のための心理学や脳科学を基盤とした学問で、臨床に必要な実践力を習得します。6年次の前期には、保健所や行政機関、地域のクリニックなどで行う社会医学実習があります。

臨床医学と臨床実習

 3年次前期から臨床医学を学ぶ「統合臨床医学」が始まります。これは臓器別のコースで構成されており、講義とグループ学習を並行して行います。グループ学習では、少人数で実際の臨床例に基づいた課題に取り組む、問題解決型学習形式を導入しています。自ら考えながら学ぶとともに、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力も学修します。知識のみならず、学習に対する意欲を高め、アクティブラーニングの手法を身につけることで、科学的思考や生涯にわたって共に学ぶ姿勢を培います。

 4年次の6~10月に「診断学入門」で基本的な診察技能を学びます。10~11月に、臨床実習に参加するに十分な医学知識、診察技能、患者さんと接する態度を身につけているかをチェックする2つの共用試験(CBT、Pre-CC OSCE)を受験します。合格者のみが法的に認められたスチューデントドクターとして臨床実習に参加することができます。臨床実習は4年次の1月から6年次の9月まで行われ、一部の実習は学外の病院などで実施します。また、条件を満たせば海外で実習することも可能です。

 臨床実習は、指導医のもとで医療スタッフの一員として参加する「診療参加型実習」であり、診療や患者ケア、臨床推論の能力を養います。様々な診察手技や病態を経験できるシミュレーターも使用します。また、患者さんの権利、医師の義務と裁量権、インフォームド・コンセントなどについても実践的に学びます。臨床実習を終了すると、卒業時の臨床能力(初期臨床研修開始時に必要な臨床能力)が備わっているか、臨床実習後客観的臨床能力試験(Post-CC OSCE)による評価を受けます。また、臨床実習期間中には医学英語のグループ学習もあります。

ライフサイエンスコース

 医学科出身の医学、生物学分野の研究者不足に対応するため、本学では2006年度から研究者養成のためのライフサイエンスコースを設置しています。基礎医学研究者や研究志向の臨床医を志望する医学科学生が一般の授業以外に選択することができます。基礎医学、臨床医学あわせて10数講座の教員が指導にあたっており、世界の第一線で活躍しうる人材を育成することを目指しています。本コースでは、研究とは何か、という根本的な理解から、研究倫理、実験、学会発表、論文執筆まで一連のプロセスを体験することができます。2012-16年度には文部科学省の「基礎・臨床を両輪とした医学教育改革によるグローバルな医師養成」事業による支援も受けました。現在まで論文実績、学会発表などの業績も順調に伸びています。

以上、医学科のカリキュラムでは、専門知識・スキルのみならず、教養と汎用能力を養いつつ、真摯な態度で医学・医療の発展を実践的に担い、国民の健康を支える医療人を育成します。

▼看護学科

看護学科のカリキュラムは、全学的に定められた教養と汎用能力のコンピテンシー(資質・能力)と、看護学科独自に定めた専門知識・スキルすべてを確実に身につけ、それらを統合的に発揮する力、すなわち「自ら学び、自ら考える力」を獲得するように設計されています。

共通教育科目の履修を通じて多様な知識や自らの専門以外の学問分野の考え方を学ぶ一方、専門科目の履修を通じて自らの専門分野の知識や考え方を深く身につけることで、将来多様な立場・分野・考えの他者と協働して現実社会の問題解決を図るための基礎的素養を身につけます。

初年次前期に開講される学部入門ゼミにおいては、主体的学習の理解を図り、コミュニケーション・スキルの基礎、情報に対する科学的な見方や考え方、論理的思考などについて学習します。これらのコンピテンシーは一朝一夕に身につくものではないことから、以降の科目履修を通じて繰り返し学習・応用することによって在学期間を通じてブラッシュアップします。

共通教育科目の語学教育科目において外国語リテラシーの基礎を身につけるとともに、英語については、専門科目において看護学分野に関わる文章の読み書きを行う機会を繰り返し設けることにより、将来専門性をもって世界で活躍するために必要なレベルの力を身につけます。

専門知識・スキルは、豊かな人間性、問題解決能力、看護実践力、連携する力、地域ケアに貢献する力、自己研鑽力に大別され、それぞれ以下の〈科目区分〉によって学びます。

豊かな人間性は、全学共通科目と専門基礎分野を履修し、臨地実習で統合することで、倫理的な諸問題に対処し、対象者の尊厳と権利を擁護する能力を身につけます。

問題解決能力は、、専門基礎分野と専門分野を履修することで、看護学に関する幅広い知識を身につけると共に、専門領域ごとの臨地実習によってそれらの知識を統合し活用することによって対象者を全人的に理解し、健康問題を科学的に判断し、創造的に解決できる力を身につけます。

看護実践力は、専門分野を履修することで、専門領域の看護に関する知識・技術を学び、《専門領域ごとの臨地実習》によって論理的思考のもと対象の特徴をふまえ、科学的な根拠に基づいた看護を実践する知識、技術を身につけます。さらに専門領域ごとの知識・技術を統合し、より専門性の高い実践ができるように専門領域を選択した地域包括・移行期ケア実習を通して看護実践力を身につけます。

連携する力は、社会情勢と看護の役割の関連を〈看護の統合と実践〉、専門領域ごとの連携のあり方を専門分野で学び、看護の担うべき役割を認識し、他領域の専門家と協力し連携する能力を網羅的に身につけます。

地域ケアに貢献する力は、〈地域・在宅看護論〉を中心に学習し、〈実践看護学〉を履修することで、ケア対象者の特性に応じた地域貢献について理解を深めます。国内外における社会情勢の変化を敏感に捉え、看護を国際的な視野からみつめ、保健・医療・福祉に貢献する能力を体系的に身につけます。

自己研鑽力は、看護の本質と専門性の探究を目指し、全学共通科目、学部入門ゼミに始まり、専門基礎分野と専門分野の履修を通して、将来に向けて、主体的・継続的に学習できる生涯学習力を身につけます。

これらの専門知識・技能は講義を聞くだけではなく、教員-学生間の濃密な質疑応答、学生間のディスカッション、演習、プレゼンテーションなどを含む能動的学習を授業に積極的に取り入れることにより、自らの専門分野の問題解決に応用できる実用的な知識・技能の水準に昇華させます。

特に、看護の専門分野は、問題解決型学習を導入し、テーマ学習や事例分析をすすめています。専門科目ごとの臨地実習では、反転授業を用いたオリエンテーションを導入し、自律的な学習者として臨地実習に取り組む姿勢を強化しています。全科目終了後には、看護基礎知識・技術到着度調査を実施し、学生の能力獲得状況を評価しています。これをもとに翌年の教育内容の改善をしています。

学生の学修成果は、シラバスに明記された評価方法及び評価基準に基づいて、到達目標への到達度により評価します。総括的評価と形成的評価を行い、臨床実習開始前の資格判定はアウトカムベースで行います。また、卒業判定はディプロマポリシーによる総合評価とします。

医学部の入学者受入方針(アドミッションポリシー)

▼育成目標【国民の健康を支える医療人の育成】

 病める人の苦痛を自らの苦痛と感じることができ、生涯にわたって医学的知識、技術の修得に努め、地域社会・国際社会の保健医療・福祉に貢献する人材及び疾患の原因解明や治療法の開発に寄与できる研究者の養成を目指しています。

▼求める資質・能力・人物像

医学部では、「国民の健康を支える医療人の育成」を行うため、次のような資質と能力を持つ人を求めています。

  • 単に病気やけがを治すだけでなく、一人一人に最良の医療を提供するために、努力を惜しまない人
  • 健康問題に興味があり、地域医療や国際医療に貢献したいと考えている人
  • 疾患の原因を解明し、治療法を開発したいと考えている人
  • 深い人間愛と広い視野を持ちコミュニケーション能力が高い人

各学科の育成目標と求める能力・人物像、入学前に学習しておくことが期待される内容、試験区分別の入学者選抜の基本方針

▼医学科

<育成目標と求める能力・人物像>
 医学科では、幅広い知識と高度な技能の獲得とともに、人格の涵養にも重点を置いたカリキュラムにより、次世代医療を担う優れた医師及び医学研究者の養成を目指しています。
 国民の健康を支える医学・医療に将来、携わることへの強い意志と深い関心を持ち、総合的理解力、論理的思考力、問題解決能力を備え、他者とのコミュニケーション及び自己表現に優れるとともに、自己啓発のために生涯にわたって学ぶことを継続する意欲を持つ人を求めています。
 <入学前に学習しておくことが期待される内容>
 医学科で幅広い医学的知識を学習するために必要な基礎学力を身につけておいてください。特に、大学受験の理科科目として物理学、化学を選択した学生であっても生物学の基礎を修得していることを期待します。外国語の修得には時間がかかりますので、入学前から常に英語力の向上を目指してください。また、多彩な人との豊かな人間関係を築くこと、様々な組織の中でチームワークによる活動の経験を持つことによって、医療人に求められる高い倫理観、信頼される人間性、広い社会的視野を涵養することを心掛けてください。
<試験区分別の入学者選抜の基本方針>
一般選抜(後期)
 本選抜では、出願書類に加え第1段階選抜合格者に面接を課します。これにより情操、創造力や適応力など人間性の観点からの選考も行います。また、「調査書」など各教科の学習記録により、医学を学ぶに足る基礎学力が定着しているかどうかを評価します。これらの選考により将来人間性豊かな医師または独創的な医学研究者に成長しうる学生であるかどうかを判断します。最終選抜は以上の結果に加え、大学入学共通テストの成績ならびに個別学力検査から総合的に行います。 
 なお、第1段階選抜は選抜方法・合否判定基準に基づき実施します。
学校推薦型選抜Ⅱ
 本選抜では、出願書類に加え、将来本学を含む山梨県内での医療活動に従事する意欲の有無やその理由も合否判定の材料とします。また、第1段階選抜合格者に面接を課します。これにより情操、創造力や適応力など人間性の観点からの選考を行います。さらに、「調査書」など各教科の学習記録により、医学を学ぶに足る基礎学力が定着しているかどうかを評価します。出願書類のうち「多面的・総合的な評価のための申告書」は、アドミッションポリシーの理解度、大学で学びたいことの具体性、将来展望の明確性などを測る目的で主に面接時の資料として活用します。「学校長推薦書」からは学力のみならず、高校生活での主体的活動の有無や積極性など人間性の豊かさも評価します。これらの選考により将来人間性豊かな医師または独創的な医学研究者に成長しうる学生であるかどうかを総合的に判断します。
 なお、第1段階選抜は選抜方法・合否判定基準に基づき実施します。 

▼看護学科

<育成目標と求める能力・人物像>
 看護学科は、生命の尊厳を基本とし、看護の倫理性を身につけ、深い人間愛と広い視野を持つ看護専門職及び看護学研究者の育成を目的としています。そのため看護学科では、人間への深い関心と優れたコミュニケーション能力を備え、多様な健康問題を科学的に判断し解決できる能力を有し、保健・医療・福祉に貢献するために継続的に努力できる人を求めています。
<入学前に学習しておくことが期待される内容>
 看護学科入学までに高等学校で学ぶ数学、理科、国語、英語、社会の内容を十分理解していることが必要です。加えて、主体的に学習する態度を身につけ、多様な世代の人々と豊かな人間関係を築き、国内外の社会情勢の変化に眼を向けてください。
<試験区分別の入学者選抜の基本方針>
一般選抜(前期)
 本選抜では、出願書類に加え、受験者全員に面接を課します。これにより、情操、創造力や適応力など人間性の観点からの選考も行います。また、「調査書」など各教科の学習記録により、看護学を学ぶに足る基礎学力が定着しているかどうかを評価します。これらの選考により、将来人間性豊かな看護職に成長しうる学生であるかどうかを判断します。
 選抜は以上の結果に加え、大学入学共通テストの成績ならびに小論文から総合的に行います。
一般選抜(後期)
 本選抜では、出願書類に加え、受験者全員に面接を2回課します。これにより、情操、創造力や適応力など人間性の観点からの選考も行います。また、「調査書」など各教科の学習記録により、看護学を学ぶに足る基礎学力が定着しているかどうかを評価します。これらの選考により、将来人間性豊かな看護職に成長しうる学生であるかどうかを判断します。
 選抜は以上の結果に加え、大学入学共通テストの成績から総合的に行います。
学校推薦型選抜I
 本選抜では、出願書類に加え、受験者全員に面接を課します。これにより、情操、創造力や適応力など人間性の観点からの選考を行います。また、「調査書」など各教科の学習記録により、看護学を学ぶに足りる基礎学力が定着しているかどうかを評価します。出願書類のうち「多面的・総合的な評価のための申告書」は、アドミッションポリシーの理解度、大学で学びたいことの具体性、将来展望の明確性などを測る目的で主に面接時の資料として活用します。「学校長推薦書」からは学力のみならず、高校生活での主体的活動の有無や積極性など人間性の豊かさも評価します。これらの選抜により将来人間性豊かな看護職に成長しうる学生であるかどうかを総合的に判断します。
 選抜は以上の結果に、小論文によるバランスのとれた判断力、論理的構想力、表現力等の評価を加え総合的に行います。