平成29年度卒業式式辞

 本日、山梨大学の学部・専攻科・大学院の卒業式・修了式を迎えた1,101名の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。
 また、この晴れの日を心待ちにしてこられたご両親をはじめ、ご家族の皆様方には、教職員一同心からお祝いを申し上げますとともに、これまでの厚いご支援に対し、心より御礼申し上げます。
 ご来賓の皆様には、ご多忙の折、ご臨席を賜り誠に有難うございます。
 今日の佳き日を迎え、夢を抱いて入学されてからの学生生活はあっという間に過ぎ去ったと感じている人が多いのではないかと思います。この間、皆さんは、日々学問の研鑚を通じ、幅広い教養とともに多くの知識や技術を修得され、様々な苦難を乗り越えながら、大きく成長されたものと思います。
 また、部活動やサークル活動を通じて尊敬する師や先生、先輩、同輩、後輩の皆さんなど様々な人たちとの出会いがあり、かけがえのない友人を得て友情を育み、よき思い出をつくられたものと思います。

 皆さんが在学中の山梨大学での大きな出来事としては、本学、学芸学部、現教育学部卒業生である大村智先生が2015年ノーベル医学・生理学賞を受賞されたことです。
 この快挙は、近年厳しい環境におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報であり、山梨大学にとって大いなる誇りと励みになりました。
 大村先生からノーベル賞の賞金の一部をご寄附いただき、これをもとに山梨大学大村智記念基金を創設し、優秀な入学生18名に対して給付型の奨学金を毎年授与して3年目となります。大村先生には、本学では初めてとなる特別栄誉博士号をお贈りしたほか、先生の胸像を附属図書館玄関ホールに設置、昨年10月には、医学部キャンパス内の臨床講義棟玄関ホールに先生が発見されたエバーメクチンの分子化学構造を立体的に再現したモニュメント「Forever and ever」(=未来永劫)を設置しました。
 このエバーメクチンは、少し改良されイベルメクチンとなり、アフリカなどで流行していたオンコセルカ症に絶大な効果があり、副作用も少なく耐性の出ない奇跡的な薬として数億人の人達の生命を救ってきました。現在は、大村智記念基金の一大事業である念願の大村智記念学術館の建設を進め、来る7月19日にはオープニングセレモニーで、大村先生と京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授との対談が決定しており、私が司会を務めさせて頂くことになっています。記念学術館が本学のシンボルとなって永遠に大村先生を顕彰申し上げるとともに、学生・同窓生の皆さんや地域の皆様に愛される建物として有効に利活用されるよう願っております。
 大きな財産をお預かりした私どもは、山梨大学のますますの発展のために、今後とも精一杯努力してまいる所存です。

 先のピョンチャンオリンピックで日本は、冬季五輪史上最多記録を更新する15個のメダルを獲得しました。なかでもフィギュアスケート男子金メダリストの羽生結弦さんは右足に重傷を負いながらも66年ぶりの五輪連覇を達成し、多くの国民に深い感動と勇気、明るい希望を与えてくれました。どんな困難な状況にあっても希望を失わず努力すれば必ず報われる、羽生さんはそのことを改めて鮮烈に私たちに示してくれたように思います。
 さらに、金メダルをとるために、たとえ失敗しても取り返すプログラムを何通りも自身で綿密に計算され、考えられていたようです。実際に失敗もあったそうですが、すぐにプログラム変更をして乗り越えられました。
 また、スピードスケートでも長野県相澤病院所属の小平奈緒さん、高木菜那さんの金メダル、パシュートの高木美帆、菜那姉妹や、佐藤綾乃さん、地元、富士急の菊池彩花さんの金メダルも感動的でした。銅メダルではありましたが、「そだねー」のカーリング女子は日本ならではの素晴らしいチームワークでした。
 更にスキージャンプの高梨沙羅さんも素晴らしい成果をあげられました。彼女がトレーニングを行っているスロベニアのリュブリャナ大学とは昨年大学間連携協定を結びましたが、スロベニアを訪問して印象的だったのは、高梨さんや団長の葛西紀明さんはスロベニアでは英雄であることでした。カナダで外国人コーチについて練習をする羽生さんや、オランダで練習し、フォームを変えて成功した小平さん、国外で活躍する葛西さんや高梨さんにしろ、やはり外国に出て行って自分を磨くことの重要性を示してくれているものと思います。皆さんも学ぶところが多かったのではないでしょうか? 

 さて、現在の世界情勢を見渡してみますと、アメリカでは異形の大統領と言われるトランプ大統領の誕生により、TPP離脱、パリ協定からの離脱表明など、America firstの過激な政策が推進されています。ある意味トランプ大統領の過激政策のおかげでようやく北朝鮮問題が進展しようとしています。
 ただ、対話重視だったはずの外務大臣に相当するレックス・ティラーソン国務長官を解任し、韓国の文在寅大統領の仲介で、北朝鮮金正恩委員長と対話を進めようとしています。核・ミサイル開発の完全放棄、日本にとっては拉致被害者の帰国がMustの条件ですが、これを検証可能、不可逆的なものにする方策が求められています。何度も約束を反故にされているので、ここはしっかりとした核・ミサイル廃棄プログラムが必要です。また、わが国の安全保障上の観点から、独裁色を強める中国やロシアも脅威です。

 翻って日本をみますと、バブル崩壊以来失われた20年のデフレが2012年安倍晋三首相誕生、黒田東彦日銀総裁の超低金利政策を含むアベノミクスで景気が回復基調にあり、円安、株高となり、失業率が低下、雇用が増加し皆さんにとっては売り手市場です。
 ただ、1,000兆円の借金があり、国の財政状況が厳しいとの理由で文部科学省の予算が財務省により削られ、特に国立大学の教育、研究の根幹である運営費交付金が削減され続けています。国立大学全体で毎年1%削減が続いたので2004年から14年で、1兆1千億円から1兆円、山梨大学で100億から90億円となっています。その後も実質減り続けています。
 人件費削減のため、退職教員の不補充や人事院勧告の凍結などで、しのいでいますが、このままでは教育・研究力の低下は避けられません。山梨大学だけでなく、日本の科学研究力の低下は目を覆うばかりです。主な先進国で低下している国は日本だけです。
 Times Higher Educationという国際評価でも、東京大学は不動のアジアNo.1の順位から現在8位にまで順位を下げました。この財務省/文部科学省の国立大学予算削減の政策は本当に正しいものでしょうか?

 昨今の森友学園問題にみられますように財務省は必ずしも正しい政策を打ち出すとは限りません。厳しい財務状況というのも経済学者によっては誤りで、財政再建は既に終了しているという意見もあります。財務省という、官庁のなかでもトップ中のトップの人々が集まる役所でさえ、このような有様です。
 私も山梨大学学長としてこの緊縮政策の誤りを、国立大学協会や日本経済新聞などで一年あまり訴え続けています。本学は教職員のがんばりで何とか教育・研究力を維持していますが、今後は予断を許さない状況です。
 皆さんは、こうした内憂外患のなか、船出していくことになりますが、どうか自分を信じ、勇気をもって自分なりの人生を紡ぐために漕ぎ出してください。個人としての幸せを追及することはもちろんですが、同時に、高等教育を受けた者として、社会をよりよくするという使命感をもって生きていただきたいと思います。われわれ山梨大学も逆風の中、皆さんの母校、港としていつでも適切な支援と生涯学習の場を提供できるよう、教職員一同力を合わせて進んでいきたいと思っています。

 ところで、今年も卒業生のなかに世界7か国から来られた23名の留学生がいます。言葉はもちろんのこと、文化や習慣など、様々な面で大きく異なる環境下で修学することは大変困難であったろうと思います。それを乗り越えて本日を迎えられた皆さんを称え、ここから英語でスピーチします。

 Among today’s graduates are 23 international students from 7 different countries.
 You have made it to this day after studying hard, and overcoming the difference of languages, lifestyle and food here in Japan.
 I congratulate you on your great efforts, and I wish you every success in your future endeavours.
 I hope that you will look back on time you had here in Yamanashi with fondness, and treasure the memories of the people you met and the things you learned at our university.
 Thank you.

 最後に皆さんが自分の人生は自分がつくるという自覚を持って、地域のため、日本のため、そして世界のために活躍されることを心より祈念し、わたくしの式辞と致します。

平成30年3月23日
国立大学法人山梨大学
学長 島田眞路