平成30年度入学式式辞

 山梨大学の学部・大学院及び特別専攻科に入学された1,185名の学生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。山梨大学の教職員・在学生一同、皆さんを心から歓迎致します。
 これまで皆さんを支えてこられましたご両親をはじめ、ご家族の皆様方に心からお祝い申し上げます。
 また、ご来賓の皆様には、ご多忙の折、ご臨席を賜り厚くお礼申し上げます。

 これから入学生の皆さんが学ばれる山梨大学は、2002年に旧山梨大学と旧山梨医科大学が統合して誕生しました。旧山梨大学は、江戸時代1796年に幕府の学問所であった昌平校の分校として「徽典館」という名称で開講した歴史があります。その後、師範学校を経て、現在の教育学部となり、1949年に工学部が加わり、旧山梨大学となりました。
 旧山梨医科大学は、国が設立する最後の医科大学として開学しました。2002年の統合後、2004年 国立大学法人山梨大学となり、以来本学は組織改革を継続的に行い、2012年には全国に先駆けて学部の改革再編を進め、生命・食・環境・経営などの諸問題に対処することのできる人材を育成する「理」・「文」融合型の「生命環境学部」を新設しました。また、本年4月からは大学院組織の改編により、医学・工学・農学等が融合した「大学院医工農学総合教育部(博士課程)」が開設され、新たに農学系の「統合応用生命科学専攻」が設置されます。以前にもまして幅広く、より体系的で組織的な充実した教育・研究を行うことが出来るようになりました。

 本学のキャッチフレーズは「地域の中核、世界の人材」であります。その重要な使命の第一は、先端的な研究を推進することにより、世界の科学技術の発展に寄与することです。第二は、優れた教育による人材育成であります。地域の発展に寄与するだけでなく、世界を舞台に活躍できる人材を育てていきたいと考えています。
 この使命を果たすべく、本学では様々な分野で意欲的に研究を進めています。ナノテクノロジー研究の世界的拠点である燃料電池ナノ材料研究センターや、クリーンエネルギー研究センター、先端的ライフサイエンス研究を推進している発生工学研究センター、我が国唯一の国立大学ワイン科学研究センターなど、各々大きな成果を挙げています。また、医学系を中心として、融合研究臨床応用推進センターでは、神経科学、免疫学、腫瘍学の分野で最先端の研究を行っています。これらの優れた山梨大学の研究は一昨年7月に「Nature」という世界No.1の一流誌に紹介されました。
 更に医学部では、先端的教育システムとして「リエゾンアカデミー・ライフサイエンス特進コース」という1年生から高度な研究を開始できる研究医養成システムを構築しています。このコースを受講した学生は、文部科学大臣賞ほか、数々の賞を受賞するなど高い評価を受けています。工学部ではアクティブラーニング、テニュアトラック制度をいち早く取り入れ、教育研究面で大きな成果をあげています。

 また、医学部附属病院は、特定機能病院として高度で安全な医療を実施し、天上吊り下げ型MRI装置、TAVIという高度な心臓手術が行えるハイブリッド手術室、内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」など高機能の手術設備や、広くて清潔、居心地の良い患者のニーズに応えた新病棟が稼働しています。医療安全対策、感染対策も万全であり、全国でも屈指の高度な医療を提供する病院であります。病院の経営改善に継続して取り組み成果をあげており、外部機関から極めて高い評価を受けています。昨年行われました、大変厳しい厚労省、県などによる共同指導でも称賛のお言葉を頂戴いたしました。昨年からは新病棟Ⅱ期工事が開始され、平成32年には新々病棟の開院に向け先進医療を含む高度医療をより一層推進して行きます。

 さて、皆さんご承知のように、2015年秋、本学、学芸学部、現教育学部卒業生である大村智先生のノーベル賞受賞に日本中が沸きました。大村先生が、イベルメクチンという寄生虫病の特効薬の発見で、日本人で3人目のノーベル医学・生理学賞を受賞されると云う吉報、近年厳しい環境におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報でありました。本学の教職員一同そして学生にとって大いなる誇りと励みになりました。
 これを機に、大村先生からノーベル賞の賞金の一部をご寄附いただき、これをもとに山梨大学大村智記念基金を創設し、優秀な入学生18名に対して給付型の奨学金を毎年授与しています。大村先生には、本学では初めてとなる特別栄誉博士号をお贈りしたほか、先生の胸像を附属図書館玄関ホールに設置、昨年10月には、医学部キャンパス内の臨床講義棟玄関ホールに先生が発見されたエバーメクチンの分子化学構造を立体的に再現したモニュメント「Forever and ever」(=未来永劫)を設置しました。是非ご覧ください。
 このエバーメクチンは、少し改良されイベルメクチンとなり、アフリカなどで流行していたオンコセルカ症に絶大な効果があり、副作用も少なく耐性の出ない奇跡的な薬として数億人もの生命を救ってきました。
 そして、現在は大村智記念基金の一大事業であり、念願の150人収容できる記念ホールや展示コーナーを設けた大村智記念学術館の建設を進め、来る7月19日にはオープニングセレモニーで、大村先生と京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授との対談が決定しており、私が司会を務めさせて頂くことになっています。オープンを楽しみにしてください。
 記念学術館が本学のシンボルとなって永遠に大村先生を顕彰申し上げるとともに、学生の皆さんや地域の皆様に愛される建物として有効に利活用されるよう願っております。
 大きな財産をお預かりした私どもは、山梨大学のますますの発展のために、今後とも精一杯努力して参る所存です。

 山梨県は風光明媚な地であり、厚生労働省の調査では、自立して日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」について、男性が全国第一位で女性は第三位に、また移住希望調査でも第二位に輝きました。皆さんは、このような素晴らしい環境の山梨県で4年ないし6年学ぶことになります。本年度から学生サポートセンターを設置し、快適に修学生活を送れるように様々な相談支援体制を整えています。
 これからの1年間は、甲府キャンパスで全学共通の科目を受講することになります。大村先生から頂戴した言葉のひとつ、「一期一会」の精神で、目標も考え方も異なる他学部の学生と積極的に交流を深め、心を開いて語り合える友人をたくさん作って欲しいと思います。更に、スポーツ・読書・旅行・芸術など、皆さんの進む専門分野によっては直接関係のない分野にも興味をもって、教養を深め、人間としての豊かさを培って頂きたいと思います。
 大学院や特別専攻科に入学した皆さんは、更に高度な専門知識と国際的なコミュニケーション能力を身に付けて下さい。国際的な視野に立ち創造的な研究を推進する優れた研究者、高度な専門職業人として、社会の中核を担う人材に成長して頂きたいと願っています。

 今年も学部や大学院に世界9の国と地域から33名の留学生を迎えました。
 留学生の皆さんのために、ここから少し英語でスピーチします。

 To all the international students here today: we would like to welcome you to Yamanashi. You have come from all over the world, including Bangladesh, China, Indonesia, Malaysia, Mongolia, Nepal, Sri Lanka, Vietnam and Taiwan.
 It is our great pleasure to have you here. We sincerely hope that you will enjoy campus life here in beautiful Yamanashi.
 We will endeavour to do our very best to facilitate your educational needs, and help with your career development.
 We hope that your stay at our university will be a successful one.
 Thank you.

 結びになりますが、本日、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様方、並びにご家族の皆様方には、入学生の皆さんを今後共あたたかく見守って頂きますように、また、本学へも引き続きご支援賜りますように、お願い申し上げます。
 本日、山梨大学に入学された1,185名の皆さんとそのご家族の皆様方に、今一度心からのお祝いを申し上げ、わたくしの式辞と致します。

平成30年4月6日
国立大学法人山梨大学
学長 島田眞路