連続市民講座(2017)

テーマ

「未来に向けて~過去から現在そして未来~」

 山梨大学は今年度も読売新聞甲府支局と共催し、「未来に向けて~過去から現在そして未来~」と題した全10回の連続市民講座を開催します。山梨発の“チカラ”を活かして創り出された新しい技術や、医療の進歩による未来、心を豊かにする文化についてとりあげます。
 第1回講義は、山梨大学生命環境学部地域食物科学科 柳田藤寿教授を講師に、「酵母や乳酸菌の発酵による新商品の研究と開発~ワインとヨーグルト、食べるジュース~」と題して行います。
 聴講は無料です。4月から来年3月まで毎月(8月と1月を除く)第3土曜日に山梨大学の教員が登壇し、専門の分野を図解などを用いて分かりやすく解説します(11月のみ第2土曜日)。7回以上出席した聴講者には修了証書「Master of Future」を授与させていただきます。
                                                                キャンパスネット

日時・場所

開催日 4月〜来年3月まで毎月(8月と1月を除く)第3土曜日 (全10回)
※ ただし11月は第2土曜日の開催です。
会場 山梨大学 甲府東キャンパスA2−21教室(地図
定員 330人
時間 午後1:30〜3:00まで(午後1時開場)
受講料 無料

申込方法

申込が無くても聴講は可能です。
準備の都合上、第1回の講義については葉書・封書の郵送、電子メール、FAXによる事前申込を受け付けております。
受講希望日・住所・氏名・年齢・電話番号を明記の上、下記宛先へ送付してください。

葉書・封書の宛先:〒400−8510 甲府市武田4−4−37 
山梨大学教務課「山梨大学教務課連続市民講座担当」

電話の場合:055−220−8043
「山梨大学教務課連続市民講座担当」

FAXの場合:055−220−8796
「山梨大学教務課連続市民講座担当」

電子メールの宛先: koukai-kouza@(アットマーク)yamanashi.ac.jp
題名は「連続市民講座申し込み」   

連続市民講座のスケジュール

開催日 講義題目 職名  講師名
 1  4月15日
(土)
酵母や乳酸菌の発酵による新商品の研究と開発
~ワインとヨーグルト、食べるジュース~
生命環
境学部
教授  柳田藤寿
 発酵食品とは、微生物の力によって、もとの食材にない美味しさが加えられ、栄養価が高くなり、保存性が増したものです。最近の健康ブームから、発酵食品が脚光を浴び多くの商品が販売されています。演者は、県内の自然環境から有用な発酵微生物(酵母や乳酸菌)を分離し、地域活性化に役立つ発酵食品の研究開発や商品開発を行っています。
 そこで本講演では、この発酵微生物を利用して、海水から分離した酵母を用いた「世界初の海洋酵母ワイン」、6 ~ 7年に一度現れる幻の湖の富士六湖(赤池)から分離した酵母を利用した「幻の湖―富士六湖からのワイン」、2019年に迎える甲府市の開府500年に向けて「甲府市における発酵性酵母の分離とスパークリングワイン」を研究・開発してきました。さらに大豆を丸ごと使った乳酸発酵飲料「大豆で作った飲むヨーグルト」や、種や皮も入った栄養たっぷりな新たな「食べるぶどうジュース」の商品の開発研究なども行っています。これらの新商品などの研究開発や現在の研究について詳しく説明します。
開催日 講義題目 所属 職名 講師名
5月20日
(土)
大学から新しい医療技術を創り出す
~難病への大学の挑戦~
副学長 岩崎 甫
  日本は世界の中でも平均寿命が長い国の一つで、昔に比べると、多くの病気に良い療法があります。それでも、治療が困難ながんなどの病気はまだまだ多く、より良い治療法が求められています。これまでは新しい治療法のほとんどは製薬会社などが創り出してきましたが、最近は大学などの研究機関から新しい治療法が創り出されることが世界的に多くなってきました。日本でも大村智先生の研究やiPS細胞などノーベル賞を受賞するレベルの高い研究が大学や研究施設で行われています。これらを上手に活用して、新しい医療を社会に提供する取り組みが進んでいます。新しく提供されようとしている医療技術には、重症な心臓病に対する細胞シート、脊髄損傷からのマヒに対する幹細胞治療、脳の指令を上手に活かすロボットスーツ、がん細胞だけを破壊するウイルス療法など画期的なものも多く、これらの展開に大きな期待が持たれています。山梨大学でも医学部と工学部が共同で新しいがんの診断法やリハビリテーションの支援装置などが創り出されようとしており、地元の企業と連携しての新しい器具作りも始まっています。
 この講座では、このような大学発の新しい医療技術の創出についてその現状を紹介します。
開催日 講義題目 所属 職名 講師名
3 6月17日
(土)
ロコモティブシンドロームを御存じですか?
~美しいエイジングとは~
医学部 教授 波呂浩孝
 2016年4月の国の統計によると、全人口に占める65才以上の高齢化率は27%であり、男性24%、女性30%でした。平均寿命は男性81才、女性87才ですが、日常生活に制限のない期間(健康寿命)はそれぞれ70才、74才でした。つまり男女ともに10年以上介護を要する期間が存在することになります。さらに、国内で腰や膝の加齢性変化による障害を持つ患者はそれぞれ約3800万人、2530万人と言われています。このため、介護を要する日本人の25%は骨や軟骨、神経、筋肉などの運動器が障害され、直立動作や歩行に支障が生じていました。骨粗鬆(こつそしょう)症による背骨や大腿骨の骨折、脊柱管狭窄(きょうさく)症、変形性関節症など多くの運動器の障害によって介護を要する状態や、そのリスクが高い状態をロコモティブシンドロームといいます。
 本講座で運動器の加齢による変化と適切な対策を学習して、健康で美しい元気なエイジングが達成できます。
開催日 講義題目 所属 職名 講師名
4 7月15日
(土)
古代甲斐国と遠距離交通
~官道「東海道甲斐路」の開通がもたらしたもの~
教育
学部
教授 大隅清陽
 「甲斐(かひ)」の地名は、最近の研究では、太平洋沿いの交通路である東海道と、山岳地帯を横断する内陸交通路である東山道の結節点としての「交ひ(かひ)」に由来すると考えられています。7世紀の末に成立した日本の律令国家は、都から放射状に広がる七つの官道を設け、約16キロメートル間隔で駅を設置して、そこで飼育される駅馬を乗り継いだ役人が往来することによって、中央集権体制を維持していました。この古代官道は、かつては近世の街道と同程度のものと考えられていましたが、最近では、発掘調査などによって、都と地方を最短距離で結ぶために、平地では目的地を直線でつなぎ、道幅も9 ~ 12メートルで規格化されていたことがわかっています。
 官道である東海道と東山道のどちらも通っていない甲斐では、東海道横走駅(現・御殿場市)から分岐し、甲斐国府へ至る支路が東海道甲斐路(御坂路)として整備されました。中世には鎌倉街道となり、現在の国道137・138号線へと継承される道路です。その沿線には、水市(山中湖周辺)・河口(河口湖周辺)・加吉(笛吹市御坂町周辺)の三つの駅も置かれていました。この講座では、古代の高速道路とも言えるこの官道の設置が地域に及ぼした影響を、さまざまな観点から考えてみたいと思います。
開催日 講義題目 所属 職名 講師名
5 9月16日
(土)
生殖技術の最前線
~絶滅動物のクローンから宇宙生殖まで~
生命環
境学部
教授 若山照彦
 生殖技術の発展により、一昔前はSF小説にしか出てこなかったクローン動物を作れるようになってきました。またフリーズドライ状態で保存した精子(水を加えると元に戻るインスタント精子)から子供を作りだすことも可能になりました。インスタント精子は細胞膜が壊れ死んでしまいますが、ミクロのマジックハンドを使って卵子と受精させれば子供になるのです。この実験で私たちは、生命は核(DNA)が壊れていなければ生き返らせることが可能ということを発見しました。そこでクローンとインスタント精子の知識と技術を合わせることで、16年間、-20℃で凍結保存されていたマウスの死体から取り出した核を使って、健康でかわいいクローンマウスの赤ちゃんを作ることに成功しました。また、尿にわずかに含まれる細胞を使うことで、動物を一切傷つけずにクローンを作ることにも成功しました。これらの技術をさらに発展させれば、絶滅動物の復活や絶滅危惧種の救済も夢ではなくなるかもしれません。
 一方、人類は宇宙ステーション内で長期間宇宙滞在することが出来るようになってきました。将来は宇宙で子孫を作り繁栄する時代も来るでしょう。しかし、宇宙ステーション内は放射線量が地上の100倍もあり、逆に重力はほとんどありません。このような特殊な環境で果たして人類や家畜は子供を作ることが出来るのでしょうか。
 本講義では、我々が取り組んでいるこれらのSF的な生殖技術について最新の結果を紹介いたします。
開催日 講義題目 所属 職名 講師名
6 10月21日
(土)
頭角を現した第4のがん治療法
~科学的根拠に基づくがん免疫療法~
医学部 講師 猪爪隆史
 最近、がん治療を根底から変えうる薬剤がメラノーマ(ほくろのがん)、肺がん、腎臓がんに対して承認され話題となっています。患者さんの体内にある、がんと直接戦う免疫細胞(Tリンパ球)を活性化する抗PD-1抗体という薬剤です。治療の範疇(はんちゅう)としてはがん免疫療法に入ります。薬剤ががんの増殖を抑えるのではなく、薬剤で活性化した患者さんのTリンパ球ががんを抑えるのです。そして攻撃すべきがんの目印を記憶したTリンパ球は体内に長く残って働きます。そのため抗PD-1抗体をはじめとするがん免疫療法は効果が長持ちするのが最大の特長です。さらに抗PD-1抗体の成功をきっかけに、玉石混交であったがん免疫療法の研究全体が急速に発展しました。現在も、より多くのがんに適用でき、より多くの患者さんに役立てるための研究が世界中で進められています。
 一方、抗PD-1抗体では一部の患者さんに副作用(活性化したT細胞が自分の正常な組織を攻撃してしまう現象)が出る事から、従来の“免疫療法は体にやさしい”というイメージが必ずしも正しくない事も分かってきました。さらに少量の抗PD-1抗体を科学的根拠がない治療と組み合わせて、高額な治療を行うクリニックが多くなってきたのも大きな問題です。
 今回はがん免疫療法の現状と将来の展望について、科学的根拠を示しつつ、わかりやすくお話ししたいと思います。
開催日 講義題目 所属 職名 講師名
7 11月11日
(土)
慢性痛の原因は脳?
~グリア細胞の発見でわかってきたこと~
医学部 教授 小泉修一
 痛みは大きく2つの種類に分けられます。切り傷、擦り傷等による「急性痛」と、腰痛や神経障害性疼痛などの「慢性痛」です。急性痛は生体の警告系として重要ですし、またこれらの痛みをコントロールする治療法があります。ところが、慢性痛は痛みの原因が取り除かれていても持続することが多く、もはや警告系の域を出た不要な痛みであり、その原因・治療法もよくわかっていません。腰痛等の慢性痛で苦しむ患者さんは多く、病因の究明と根本的な治療法の開発は喫緊の課題であると言えます。
 最近、この慢性痛の原因が、痛む箇所(腰とか足)ではなく、脳や脊髄にあることがわかってきました。脳や脊髄は、神経細胞が集まっている、神経の塊のような臓器だと思われがちですが、実は神経以外の「グリア細胞」と呼ばれる細胞が何倍も多く存在しています。あまり活動しない細胞なのでこれまでほとんど無視されてきたグリア細胞ですが、最近の脳科学の発展により、グリア細胞が脳でとても大事な役割を果たしていることが次々に明らかにされています。慢性痛の原因も、脳や脊髄のグリア細胞の働きの異常に原因があります。グリア細胞。聞き慣れない単語ですが、本講義では、グリア細胞とは何者なのか?どうして慢性痛が起こるのか?について、神経障害性疼痛(とうつう)と呼ばれる慢性痛を例に最新の研究成果を紹介します。
開催日 講義題目 所属 職名 講師名
8 12月16日
(土)
将来のクリーンなエネルギーとして期待される「水素」
~水素を作り、電気や熱に変える技術の最前線と将来~
燃料電池ナノ材料研究センター センター長 飯山明裕
 部屋の照明や室内を温める暖房には、電気や熱を使います。これらは、天然ガスや石油、石炭などから得ています。それらの資源量には限りがあり、また日本はほぼ全てを輸入しています。さらに、電気や熱を作る際にCO2や有害な排出物が出てしまいます。そこで、クリーンで高効率な発電ができ、熱も得られる新しいエネルギー源が期待されています。それが、水素(H2)です。水素は水(H2O)として膨大な量が地球上に蓄えられています。その水を、太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーによる電力で電気分解することで、CO2を発生させることなく、大量の水素を作り出すことができます。
 この水素を電気や熱に変えて私たちの生活をさらに豊かにする「水素社会」の実現が期待されています。既に、燃料電池から電気や温水を家庭に供給する『エネファーム』や、燃料電池で発電した電気で走る燃料電池自動車が発売されています。
 本講座では、この分野で世界トップクラスの山梨大学の最新の成果から、水と電気から水素を作り出す「水電解」、水素から電気や熱を効率よく取り出す「燃料電池」、それらに用いる原子レベルで構造を制御されたナノ材料をご紹介し、「水素社会」の実現にむけた展望を示します。
開催日 講義題目 所属 職名 講師名
9 平成30年
2月17日(土)
アレルギーとは何か?
~最新の理解と予防・治療法~
医学部 部長 中尾篤人
 花粉症や喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎といった病気は、大きく「アレルギー疾患」と呼ばれています。これらの病気は私たちの体を細菌やウイルス、かび、寄生虫などの病原体から守ってくれている「免疫」のしくみがスギやイネなどの花粉やダニの分泌物、卵や小麦、ソバなどの食物成分といった私たちの体に害を及ぼさない物質に誤って反応することによって起こります。
 アレルギー疾患は、くしゃみ、鼻水、咳、かゆみなどの症状によって日常生活に大きな影響を与えます。例えば、近年、学童期の子供の花粉症が増加していますが、鼻づまり等の症状により慢性的に睡眠不足を引き起こし、成長に影響を及ぼしたり、学習能力の低下を引き起こしたりすることも知られています。また食物アレルギーは時にアナフィラキシーショックを引き起こし、生命に危険を及ぼすこともあります。これらのアレルギー疾患による経済的損失は数千億円に匹敵するとも言われています。
 現在、わが国では2人に1人は何らかのアレルギーを持っていて、大きな社会問題の1つです。また欧米や経済発展著しい中国でもアレルギー患者は激増しています。本講演では、「免疫」のしくみからスタートして「アレルギー」のメカニズムについての最先端の考え方を平易に説明します。さらに、なぜ「アレルギー」が世界中で増えているのか、また、その最新の予防・治療法並びに日常生活での対処法についてもわかりやすく解説します。
開催日 講義題目 所属 職名 講師名
10 平成30年
3月17日(土)
山梨の健康長寿の未来
~生涯を通じた健康のあり方を探る~
医学部 教授 山縣
然太朗
 山梨県が男女ともに健康寿命日本一であることを2015年12月に厚生労働省が報告しました。これまでも山梨県が健康長寿の県であることは知られており、私たちは県と一緒にその要因が無尽に代表される人と人のつながりや団結力であることを明らかにして世界に発信しました。
 個人の生活習慣や予防行動は健康寿命にとって大切な要素ですが、健康づくりはまちづくりと従来から言われているように、住民のつながりや団結力といったソーシャル・キャピタル(社会関係資本)も健康に大きな影響を与えていることが明らかになってきています。人を取り巻く様々な人間関係は高齢者の健康だけでなく、赤ちゃんの時から、いえ、さらに言えば、おなかにいる時から生涯にわたった健康(ライフコース・ヘルスケア)にも影響を与えています。
 本講座では、山梨県の健康寿命の秘訣と、県民が健康で長生きして健康寿命日本一を継続できる未来に向けたビジョンを、データを示して解説します。