山梨大学を覗いてみよう
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IDEA&HISTORY 山梨大学学芸学部(当時)を卒業した私は、故郷を離れて5年後に戻った工学部で助手として研究室の仕事をしながら、微生物の能力の素晴らしさを学びました。 幼い頃から祖母より、「人のためになることを考えなさい」と言われて育ちました。人生の分かれ道に立った時にはいつもこの言葉を思い出し、進む道を考えました。また、私は学生時代にスキーを通して「人の真似をしてもその人を越えられない」ことを学び、人の真似はしないことを信条とし、研究者としても独自の研究に取り組むことにこだわりました。その道は決して平坦なものではありませんでしたが、今思えばその苦労は決して無駄ではなかったと思います。 私は日本の科学技術や教育の未来を大変心配しています。資源の少ない日本では「人への投資」が極めて重要だと考えます。また、著しい社会環境の変化や競争の激しい世界では、人とは違うオリジナルな考えが強みとなります。 母校である山梨大学には、困難な道にも果敢にチャレンジする個性的で多彩な人材を育成することに力を尽くし、人のために役立つ研究成果を多く世に送り出して欲しいと願っています。 また、「知的資源」の拠点としての地方大学の特性を活かして、地域・産業・自治体等と連携し、地域活性化に力を発揮していただきたいと思います。 これからも山梨大学がますます発展されることを期待しています。島田 眞路 【山梨大学学長】 山梨大学のルーツは、1796年に設立された江戸幕府の学問所「徽典館(きてんかん)」にあります。以来、脈々と「知」の伝統を受け継ぎ、200年以上に亘り高等教育の学びの場を社会へ提供してまいりました。 本学は、「地域の中核、世界の人材」を旗標に掲げ、地域の基幹的大学として「知の拠点」の役割を果たし、地域の発展に貢献するとともに、強みのある分野で世界的な水準の教育研究を推進しています。また、本学が立地する山梨県は、高い自然エネルギーポテンシャル、世界文化遺産の富士山や豊かな水資源を有し、大都市圏に隣接した食料供給地としての地域特性も有しています。 本学では、今後とも本学や山梨県が持つこのような特色・優位性を活かし、本誌でご紹介した代表的な教育研究をさらに発展させるとともに、有望な萌芽的分野の成長にも力を注いでまいりたいと思います。 2015年に本学卒業生である大村智博士が「ノーベル医学・生理学賞」受賞の栄誉に輝かれたことは、私たちに勇気と感動を与えてくれました。大村博士に続くような次世代の研究者や各分野で活躍するリーダーをぜひ育成したいと思います。 さて、昨今、地方の国立大学を取り巻く財政的環境は厳しさを増しており、本学も例外ではありません。そうした中でも本学は不断の「組織・財政改革」を進めながら、本来の役割である「人材育成・研究推進」に全力で取り組んでまいります。 皆様におかれましては、今後ともご支援・ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。大村 智 【山梨大学特別栄誉博士】 2015年ノーベル医学・生理学賞受賞※大村博士は、微生物から寄生虫を駆除する物質「エバーメクチン」を発見し、より安全で効果的な治療薬「イベルメク チン」を開発したことが評価され、ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。「イベルメクチン」は、様々な感染症に対し て有効で、特にアフリカで問題となっていた「オンコセルカ症(河川盲目症)」及び「リンパ系フィラリア症(象皮症)」の 治療薬として大きな効果を発揮しています。「イベルメクチン」によってこれらの病気から救われる人は年間3億人以 上とも言われています。大村智博士と山梨大学山梨大学大村智記念基金の設立・同奨学金授与エバーメクチンモニュメントとレリーフの設置大村智特別栄誉博士胸像設置○略歴山梨県韮崎市出身1958年 山梨大学 学芸学部   自然科学科 卒業1963年 山梨大学 工学部   発酵生産学科 文部教官助手2006年 山梨大学 名誉顧問2015年 ノーベル医学・生理学賞2015年 山梨大学 特別栄誉博士

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