宮本和子 医学部教授によるカンボジアでの地域保健活動がWHO(世界保健機関)ニュースレターに掲載
宮本和子 医学部教授によるカンボジアでの地域保健活動が、WHO(世界保健機関)のニュースレター(平成30年7~12月・西太平洋地域版)に掲載されました。
本学では、AMED(日本医療研究開発機構)医療分野国際科学技術共同研究開発推進事業及びJICA(国際協力機構)草の根技術協力事業の支援により、カンボジア保健省・国立マラリアセンター(CNM)と協力して「タイ肝吸虫症」の実態調査など様々な調査研究・保健対策を実施しており、AMED研究代表者及びJICAプロジェクト・マネージャを宮本教授が務めています。
タイ肝吸虫症は、川魚★の生食により人に感染する寄生虫症で、食生活が原因となる生活習慣病です。長期罹患により肝臓がんの原因となります。WHOが近年対策を推進しているNTDS(顧みられない熱帯病)の1つで、カンボジア・タイ・ラオス・ベトナムの人々の重要な健康課題の一つに挙げられています。予防には保健行政と当事者である住民自身が協力した地域保健活動が重要となります。
宮本教授は、平成12年からカンボジアで地域保健活動に従事し、平成18年にカンボジア初のタイ肝吸虫流行地を発見し、その後も継続してカンボジアでの実態解明と予防対策に携わっています。どこで流行しているのか全く分からないところから実態調査を開始し、現在ではカンボジア全土の半分以上の州での流行が確認されています。この実績の8割以上は宮本教授の研究チームとカンボジア保健省・CNMとの共同調査によるものです。
宮本教授は「流行地の住民は川魚の生食を好んでおり、生食を止めることが予防策の近道ですが、好きなものを止めるのは難しいものです。また、駆虫薬も使用できますが、再感染を繰り返すことで肝臓がんのリスクは上がると言われています。当事者である住民が納得できる対策を考え、協力し合って予防に取り組むことが大切です。AMEDやJICAの支援を得て、今後も実態調査と予防対策活動を続けています」と述べています。
★タイ肝吸虫が卵から孵化し、人に感染する形になるには、マメタニシ類の貝である「第一中間宿主」、コイ科の川魚である「第二中間宿主」が必要です。この川魚の中に幼虫が感染していて、それを生で食べると感染します。
※ニュースレターはこちらのPDFをご覧下さい。ニュースレター内の写真は、平成30年2~3月、流行が確認された村で宮本教授が実施した住民会議と健康教育、本学医学部医師(内科学講座第1教室)とカンボジア人医師の協力による肝超音波検査、カンボジア保健省による駆虫薬配布活動の各場面です。
- CNMスタッフによる検便調査風景:感染者を検便により見つける。
- 村での健康教育・住民会議の風景:流行地の感染率の報告やタイ肝吸虫症の基礎知識等を伝え、住民と討議。(中央:宮本教授)
- 村での健康教育・住民会議の風景(中央:宮本教授)
- 村での健康教育・住民会議の風景(左奥:宮本教授)
- 住民会議後、村人の質問にクメル語で答える宮本教授(中央)
- 地方保健行政で保健スタッフとタイ肝吸虫の勉強会(右奥:宮本教授)
- 勉強会後、周辺地域を回って「中間宿主貝(第一中間宿主)」を探す。保健行政スタッフに貝について知ってもらう。(中央手前:宮本教授)
- 日本人及びカンボジア人医師と合同で超音波検査(中央:宮本教授)
- カンボジア保健省の寄生虫対策部門である国立マラリアセンター(CNM)での打合。(左2番目:宮本教授)
- CNMの中庭にて(左より、中岫奈津子医師、宮本教授、村岡優医師、Dr. Virak)※Dr. Virakは、CNMでマラリア以外の寄生虫症全般を担当する部門の責任者。
- 予防キャンペーンとして村を回りチラシを配布、情報を伝える。本学医学部看護学科学生も卒業研究や統合実習をカンボジアで行っている。