平成30年年頭にあたり早川正幸理事・副学長が挨拶

2018年1月5日 トピックス

 平成30年1月4日(木)、甲府キャンパスにおいて(医学部キャンパス同時中継)、平成30年の年頭にあたり、早川正幸 理事・副学長が、執行部の一員として、役員・教職員を前に挨拶しました。

 挨拶の中で早川理事は、「戊戌(つちのえ・いぬ)」にあたる今年は「勢いよく草木が茂る繁栄の年」「熟した果実を取りまとめ、さらに新たなものを生み出す飛躍の年」であるとし、これまでの様々な事業の成果をまとめ、検証し、それらの結果を踏まえつつ、新たな改革に取り組み、大学のさらなる発展と繁栄に繋げる年にしたいと決意を語りました。

 また、「大村智記念基金」に関する各種事業、教育・研究面、社会連携・地域貢献、医学部附属病院など、昨年取り組んだ各方面での事業等を振り返りながら、大学全体を取り巻く厳しい環境を述べた上で、「社会における大学の客観的な位置を知るとともに、教職員がコミュニケーションを取り、様々な情報を共有しつつ、全学一丸となって諸事に対処していくことが重要だ」と役員・教職員に一層の奮起を促しました。

挨拶全文

平成30年 1月 4日
理事・副学長 早川正幸

 新年あけましておめでとうございます。
 清々しい陽気の中、皆様におかれましては、お健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 本日は島田学長が所用のため、執行部の一員として、私より平成30年年頭のご挨拶を申し上げます。

 十干十二支(じっかん・じゅうにし)によれば、今年は「戊(つちのえ)・戌(いぬ)」の年であります。その言われは諸説ありますが、十干(じっかん)は草木の成長に例えられ、戊(つちのえ)は勢いよく葉が茂る様子を表し、繁栄を意味します。一方、十二支の戌(いぬ)については、果実が熟した酉(とり)年の後、作物を取りまとめ、さらに新たなものを生み出す飛躍の年と言われています。

 今年は、島田学長をはじめとする現執行部体制が発足してから4年目を迎えることになります。これまでの様々な事業の成果をまとめ、検証し、それらの結果を踏まえつつ、新たな改革に取り組み、大学のさらなる発展と繁栄に繋げる年にしていきたいと考えております。

 昨年1年間を振り返るとともに、今年の課題等について述べさせていただきます。
 大村智記念基金につきましては、ノーベル賞受賞から1年を経過した昨年も年間を通して多大なご支援が続き、現在、その総額は3億6千万円に及んでいます。これは大村先生の偉業に対する地域の皆様や法人、さらに卒業生の敬意の表れであるとともに、本学の教育研究や社会貢献に対する期待の大きさを示すものと考えております。ご寄附をいただいた地域の企業から、本学との連携協力の申し出をいくつかいただいており、産学連携構築に向けた新たなモデルとして共同研究プロジェクト等を進めております。
 大村智記念基金からは、昨年5月に18名の学生に対し奨学金を支給、10月には医学部キャンパスにエバーメクチン分子のモニュメントとレリーフを設置しました。また、大村智記念学術館の建設が開始され、来る7月19日にはオープニングセレモニーで大村先生と京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授との対談が決定しております。

 教育面では、昨年10月、大学院医工農学総合教育部博士課程の設置が認められました。本学初めての農学の学位を取得できる統合応用生命科学専攻などが含まれます。平成24年に生命環境学部が開設されて以来、懸案であった医工農学の大学院教育組織の改組は成就されることになりますが、今後は、充足率の向上も含め、改組の目的に沿った人材育成が課題となります。
 教育学研究科につきましては、昨年の有識者会議の報告を踏まえ、教職大学院へ一本化する改組に向けた準備を進めております。なお、博士課程教育リーディングプログラム「グリーンエネルギー変換工学」は終了年度となりますが、さらなる発展を目指し、今年は「卓越大学院プログラム」へ応募の予定です。
 社会人技術者のリカレント教育にも力を入れ、昨年はワイン・フロンティアリーダー養成講座を本学独自の経費で継続して開講したほか、国と山梨県からの支援のもと、燃料電池関連製品開発人材養成講座、さらに医療機器設計開発人材養成講座を開講しました。これらの社会人講座は、修了生によるワイナリーの開設や新規医療機器の開発に結びつくなど、地域産業界の振興に寄与しており、本年も継続して支援の予定です。
 海外との交流や拠点づくりも積極的に展開しており、昨年はスロベニアのリュブリアナ大学を含む5大学と交流協定を締結しました。

 研究面においては、昨年URAセンターを開設、IR室とともに本学の研究力の分析を行い、その結果をふまえ、学内研究プロジェクトの構築やマネジメント、さらには外部資金の獲得に向けた取り組みを開始しました。
 科研費については、29年度の採択額は本学全体で約8億円となり、前年度を2億円近く上回る結果となりました。同規模大学の中では最上位に位置します。これは見方を変えれば、本学の研究における底力の高さを示すものであり、特に基礎分野の研究の今後のさらなる発展に繋げたいと考えております。
 第3期中期目標・中期計画期間の重点課題である分野横断的融合研究等の学内研究プロジェクトにおいては総計約60のプロジェクトが展開され、延べ約200名の本学教員が参画するなど、本格的なステージに入っております。30年度末はとりまとめの時期になりますが、成果をふまえ新たな方向への発展を後押し、さらには新規な融合研究を構築していきたいと考えております。キラリと光る萌芽的研究を発掘し支援する目的で、昨年10月からは若手教員による執行部への研究発表事業を開始いたしました。
 本学の強みである燃料電池、発生工学、先端脳科学、流域環境科学の研究プロジェクトと大学院特別教育プログラムは引き続き重点支援を続けております。このうち流域環境分野ではSATREPSの事業が中間審査で高い評価を得ています。燃料電池分野では昨年、実用化に向けたプロジェクトが文部科学省の「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」に採択され、向こう5年間で総額約6億円の研究費の受け入れが予定されています。
 社会連携、地域貢献の分野においても多様な事業を展開しました。客員社会連携コーディネーターによる産学マッチング事業は、国からも高い評価を得ており、本年も継続しつつ発展させる予定です。地域自治体との連携も積極的に構築しており、平成27年以降、直近の笛吹市を含む4つの市と包括的連携協定を締結、今年も新たに3件の連携協定を調整中です。いずれとの協定も教育研究プロジェクトが基幹となっており、地域貢献のみならず、外部資金の獲得や教育研究機能の充実といった面からも重要な取り組みとなってきています。
 平成26年に採択された地(知)の拠点整備事業COCは、30年度が最終年度となります。これまで地域志向型授業科目の開設、地域ブランドワインの研究開発、さらに美しい里づくりを目指した地域貢献事業の展開など、多くの成果を上げてきましたが、今後はそれら事業をいかに学内へ定着させていくかが課題となります。一方、COCプラス事業は今年で4年目をむかえ、県内の多数の大学生が参加のもと、「ツーリズム」、「ものづくり」、「子育て支援」、「CCRC」の分野で教育・研究、就職支援、社会貢献等、多彩な事業が展開されています。大学間連携は今後ますます重要になってきますので、各事業をさらに支援していきたいと考えています。

 医学部附属病院においては、昨年、新病棟第Ⅱ期工事が開始されました。また、がん診断等に関わる高性能医療機器を備えた「山梨PET画像診断クリニック」が設置されました。平成32年には附属病院の新々病棟を開院し、先進医療を含む高度医療をより一層推進させる予定です。また、病院の経営改善に継続して取り組んで成果をあげており、昨年11月の特定共同指導も無事に終了いたしました。

 以上、昨年の主な取り組みと今後の重点課題について述べさせていただきましたが、現在、大学を取り巻く財政的環境は大変厳しい状況が続いています。

 昨年末には、平成30年度の予算案が示されました。国立大学運営費交付金は1兆971億円で昨年度と同額です。しかし、WPIの地方版である特定分野先導研究拠点プログラムがゼロ査定となったほか、これまで運営費交付金の外枠で実施されてきた若手人材育成事業が廃止となるなど、財政的な厳しさが増している状況です。
 昨年末には私立大学の経営状況についても厳しい内容が新聞報道されています。少子化等に起因して、私立大・短大を経営する660法人のうち、112法人(17%)が経営難に陥っており、平成32年までに経営破たんの恐れがあるというものです。

 このような大学全体を取り巻く厳しい環境の中で、教育、研究、そして社会貢献における機能を発揮するためには、社会における大学の客観的な位置を知るとともに、教職員がコミュニケーションをとり、さまざまな情報を共有しつつ、全学一丸となって諸事に対処していくことが重要だと考えております。
 本年も外部有識者による講演会や懇談会、各学域との意見交換会など対話の場を継続して設けていく予定です。また、大学の教育研究の意義をより一層、地域社会に浸透させる努力も必要です。
 島田学長のもと、皆様お一人お一人の力を集結し、この難局を乗り切り、将来を見据えた大学運営に努めてまいりたいと考えておりますので、一層のご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

この新しい年がより充実した年になるよう、心より祈念いたしまして、私からの年頭の挨拶とさせていただきます。